佐賀デジタルネットワーク(株)様がミハル通信(株)のヘッドエンド装置を新規導入

 
佐賀デジタルネットワーク(株)様がミハル通信(株)のヘッドエンド装置を新規導入
佐賀県内のケーブルテレビ事業者の連合体である佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)は、強靱な冗長構成にしたミハル通信(株)のヘッドエンド装置を新規導入し、4月1日からサービス運用を開始した。
                  

月刊ニューメディア(2016年7月号掲載)

受信点自動切替、出力信号・画音自動監視など「三重の冗長化」で長時間停波を徹底的に予防

佐賀県内のケーブルテレビ事業者の連合体である佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)は、強靱な冗長構成にしたミハル通信(株)のヘッドエンド装置を新規導入し、4月1日からサービス運用を開始した。

このヘッドエンド装置の特長は、

❶受信点の自動切替
❷ヘッドエンドの予備器への自動切替
❸ヘッドエンドからの出力信号の自動監視

という「三重の冗長化」によって、長時間の停波を徹底的に予防していることだ(図)。SDNは佐賀県内のケーブルテレビ事業者が共同出資した共同ヘッドエンド事業者。加盟局の佐賀シティビジョン(株)、(株)唐津ケーブルテレビジョン、伊万里ケーブルテレビジョン(株)、(株)ケーブルワン、(株)CRCCメディア、藤津ケーブルビジョン(株)、(株)テレビ九州、有田ケーブル・ネットワーク(株)、(株)多久ケーブルメディア、西海テレビ(株)、(株)ネット鹿島の各ケーブルテレビ事業者に地デジ、BS、CSなどの放送を配信。SDNの技術担当者は、加盟局の技術者が担当している。
本稿ではSDNの技術担当者に、導入したヘッドエンド装置の運用状況と評価を取材した。

図:佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)が導入したヘッドエンド装置の冗長構成

図:佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)が導入したヘッドエンド装置の冗長構成

❶受信点の自動切替

停波せず無人で瞬時に切替

SDNが導入したミハル通信のヘッドエンド装置による「三重の冗長化」の詳細を一つずつ見ていきたい。

まず、❶受信点の自動切替は、ミハル通信の受信点監視装置「MSV-CATVRCRAJE」が担う。1台の装置で受信点からの地デジ、BS、CSなどの入力信号を常時監視し、信号の品質が悪い場合は良好な受信点からの入力系統に自動的に切り替える。

図:佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)が導入したヘッドエンド装置の冗長構成

「このシステムは受信点を自動切替できる点が非常に優れています。従来は自動切替機能がなかったため、受信障害の発見にも、受信点の切替にも時間がかかっていました」とSDN 技術WG副WG長の松富伊織氏(佐賀シティビジョン(株)総務部技術課課長)は指摘する。SDNは今回、地デジの受信点を2カ所(県内の鳥栖と唐津)利用している。
一方の受信点で気象が原因のフェージングなどによって受信状態が悪くなったときは、もう一方の受信点に切り替える。
「従来のシステムでは、①システムからの通報メールが担当者に届く、②お客様から受信障害の連絡が入る、というどちらの場合でも障害発生後に対応を開始しました。完全停波の場合は、即時リモート操作により受信点の切り替えを実施し、受信品質が不安定な場合は、担当者が佐賀シティビジョンにあるSDNのヘッドエンドセンターに入り、測定をして本当に受信点に問題があるのかどうかを調べて問題を切り分け、その後にSDNの各ケーブルテレビ事業者に電話で連絡して確認を取りながら入力系統を切り替えるという手順を踏んでいました。そのため障害復旧まで時間がかかってしまうこともありました。それがミハル通信の受信点監視装置を導入したことで、受信点を自動切替できるようになりました」(SDN 技術WG長の坂田徹氏((株)ケーブルワン ネットワーク技術部係長))。

SDN 技術WGの金行勝司氏((株)唐津ケーブルテレビジョン 技術部主任

受信点とヘッドエンドをつなぐ回線の障害にも対応できる。「佐賀市のヘッドエンドと唐津の受信点は光ケーブル長で約60km、鳥栖の受信点は30km離れていて、参加局の連絡線の光ファイバーケーブルを利用して伝送しています。災害などでこの回線が断線した場合にも、直ちに自動切替できるので停波を防げます」(坂田氏)。 長時間の停波は加入者の解約原因となる深刻な事態であるため、「受信点監視装置はお客様にできるだけ迷惑をかけることなく受信障害を復旧できる非常に良いシステムだと思います」(SDN 技術WGの金行勝司氏((株)唐津ケーブルテレビジョン 技術部主任))と高く評価する。

❷HE予備器への自動切替

3Uの省スペースも導入理由

❷ヘッドエンドの予備器への自動切替は、ミハル通信の3Uサイズの小型ヘッドエンド「MDSRシリーズ」の機能だ。SDNが導入した「MDSRシリーズ」の地デジシグナルプロセッサー(SP)ユニットは、8台+予備器1台の冗長構成で、「MDSRシリーズ」のスイッチングハブ(SV)ユニットがSNMPエージェント機能で各ユニットを監視し、異常を検知すると故障器から予備器に自動で切り替える。

図:佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)が導入したヘッドエンド装置の冗長構成

「SPが故障した場合は予備器に自動的に切り替わるので、ヘッドエンドの運営がだいぶ楽になります。省スペース化できるのも、3Uの『MDSRシリーズ』を導入した理由です。SDNのヘッドエンドセンターはスペースに余裕がないため、システムのスリム化が必要でした。SDNでは今後、SI/QAMやPSIなども従来の9Uの製品から『MDSRシリーズ』に置き換える予定です。これによって空いたスペースに、新しいサービスのための機材を設置することができます」(SDN 技術WGの北川倫康氏(伊万里ケーブルテレビジョン(株)技術部管理通信課課長))。 ミハル通信は「MDSRシリーズ」のラインナップ拡充を進めており、今年7月に開催される「ケーブル技術ショー2016」では、新たに地デジ自主放送システム、シグナルプロセッサダイバーシティ、高度ネットワークシステムなどを展示する予定だ。

❸出力信号の自動監視

客観監視+画音監視が特長

❸ヘッドエンドからの出力信号の自動監視は、ミハル通信のCATV監視装置「MSV-CATVRA-JE」が行う。常時、ヘッドエンドからの出力信号を客観監視するのはもちろんだが、特徴的なのは映像・音声の状態も自動監視して、以上を検知したら担当者にアラームメールを送信する。

図:佐賀デジタルネットワーク(株)(SDN)が導入したヘッドエンド装置の冗長構成

「ミハル通信のCATV監視装置は出力信号の客観監視だけでなく、映像・音声監視機能も一元化して持っています。これはミハル通信製品の特長で、SDNが導入した大きな理由です」(金行氏)というように、CATV監視装置の映像・音声監視機能への評価は高い。その理由は、「ヘッドエンドからの出力信号に異常がなくても映像がフリーズやブラックアウトになっている場合、信号としてはきれいな状態ですので出力信号の客観監視では問題を発見できません。映像・音声監視機能があれば、フリーズやブラックアウトになっていることを検知できます」(北川氏)。実際にCATV監視装置の導入後の4月、映像信号はヘッドエンドからきちんと伝送されていたが、映像がフリーズしていたという事態が早朝の就寝時間帯に発生した。しかし「CATV監視装置から自動的にSDNの担当者のメーリングリストに一斉送信された『音声無し』というアラームメールに最初に私が気づき、すぐに自宅のSTBで映像がフリーズしていることを確認して、担当者に連絡しました。CATV監視装置を導入したため、長時間の停波とならずに短時間で復旧できました」(SDN技術WGの野中真氏((株)唐津ケーブルテレビジョン 技術部))。
CATV監視装置はアラームメールにも工夫を施している。「アラームメールには問題が発生している画面のJPEG画像が添付されて送られてきます。例えば、画面が異常なブラックアウトなのか、それとも正常な放送休止時なのかは、放送休止中に画面に表示されるチャンネルロゴがあるかないかを添付画像で確認すれば判別できます。この添付機能は便利です」(松富氏)。さらに、放送休止時間などの正常時に無駄なアラームメールを発報しないようにするといった、ケーブルテレビ事業者の運用に応じた柔軟な設定が可能だ。「CATV監視装置は放送休止時には、EPG情報から『放送休止』『クロージング』といった文言を認識して、アラームメール発報の対象外にできます。このような細かな設定ができるとても便利な製品です。従来は監視センターに担当者が常駐して画面を目視で監視していましたが、それがこのシステムの導入によって無人化できました」(北川氏)。

「このシステムで停波の影響を最小限に食い止めるのは使命」

ミハル通信の受信点監視装置、3Uヘッドエンド「MDSRシリーズ」、CATV監視装置によって三重の冗長構成にしたヘッドエンドを導入したSDNでは、「停波させないためには、受信点の冗長化、ヘッドエンドの冗長化、ヘッドエンドが出力するすべての信号の監視が必要不可欠です。今回導入したシステム構成ならば、仮に停波となった場合でもすぐ検知し、復旧までの時間を大幅に短縮できます」(北川氏)と、その効果を確信している。SDNを構成するケーブルテレビ事業者の経営陣からの信頼も高く、「導入してよかった。これで枕を高くして寝られる」と言った社長もいるという。SDNの技術部門の責任者である技術WG長の坂田徹氏は、「県内の半数の世帯がSDNを通して地デジを視聴されています。このシステムを導入し、停波の影響を最小限に食い止めること、これまでよりもさらに安定した信号を配信することが私たちの使命だと思っています」と、今回のヘッドエンド装置導入の意義を力強く語った。

「このシステムで停波の影響を最小限に食い止めるのは使命」

SDN 技術WGの担当者。右から、金行勝司氏((株)唐津ケーブルテレビジョン技術部主任)、WG長の坂田徹氏((株)ケーブルワン ネットワーク技術部係長)、副WG長の松富伊織氏(佐賀シティビジョン(株)総務部技術課課長)、北川倫康氏(伊万里ケーブルテレビジョン(株)技術部管理通信課課長)

月刊ニューメディア(2016年7月号掲載)

  
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