
ミハル通信「CATV監視装置」と保守サービス「M-3(エム・トリプル)」 仙台CATVが導入し、放送設備の安定・技術者不足対策・負担軽減を同時に実現

月刊B-maga(2025年7月号掲載)
仙台CATV(株)(宮城・仙台市、梶本武宏社長)はミハル通信(株)(神奈川・鎌倉市、岩田春樹社長)の「CATV 監視装置」と保守サービス「M-3(エム・トリプル)」を組み合わせて運用している。「CATV 監視装置」でヘッドエンドの状態を常時監視し、もし機器の障害などがあった場合は、直ちに「M-3」の技術者によるリモート保守で解決する。導入によって、放送設備の安定・技術者不足対策・負担軽減を同時に実現した仙台CATV に、両ソリューションの相乗効果を発揮させている運用方法、導入の背景と目的、AI を活用した新機能の導入など今後の構想について取材した。
「CATV 監視装置」で障害の兆候も 人手をかけずに自動で検出
仙台CATVがミハル通信の「CATV 監視装置」と「M-3」を導入した目的は、大きく3 つある。第1 に、放送設備の安定運用と信頼性の向上。これは総務省からの要請も背景にある。第2 に、技術者不足への対応。限られた人員での運用を機器の導入で補完する。第3 に、従業員の負担軽減だ。仙台CATV の梶本武宏 代表取締役社長は、「当社では、比較的古い放送設備が多く、順次リニューアルを進めていますが、設備故障のリスクは依然としてあります。そのため、設備の監視を強化しなければなりませんでした。事故発生時には原因の切り分け作業にかかる時間は短縮したいという狙いもありました。特に同軸伝送設備などの原因切り分けは、経験に基づく対応が主流だったため、原因分析と対処をシステマティックに行うことを目指しました。人員不足という背景もあり、それを補うためにも障害の原因分析、事故の防止・抑止を可能とするシステムの構築が必要でした。そこでベンダー各社のシステムを検討し、ミハル通信の機器を採用しました」と説明する。

「CATV 監視装置」の活用については、主に緊急時のアラートメールの発報と、その際の原因切り分け用として利用している。ユーザーから問い合わせがあった際に、それが加入者宅内の問題か、全体的な設備の問題かを判断する目的でも使用している。従来の人による監視では、障害の兆候を捉えることが難しいという課題があったが、「CATV 監視装置」の導入により、「ヘッドエンドの最終段の出力を監視することで、①障害の兆候を事前に把握できるようになり、②そのような場合には、大きな障害に拡大する前にミハル通信に相談することも可能となりました。障害の兆候の把握と事前対応が、『CATV 監視装置』導入の目的の一つです」(仙台CATV 技術部長 花田 力氏)。
また、「CATV 監視装置」導入以前は毎朝、仙台CATV の担当者が画像と音声の送出確認を1 チャンネルずつ合計約1 時間弱行っており、非常に手間がかかっていた。人員が少ない中で、担当者が休みの場合は代わりの職員が対応しなければならず、負担が大きかった。「『CATV 監視装置』の導入により、ヘッドエンドを一元的に管理できるようになり、毎朝全チャンネルを確認していた作業の負担を軽減できました。『CATV 監視装置』が自動で監視してくれるという安心感もあります」(花田部長)。
「M-3」は常時技術者が対応 夜間でも障害復旧できる安心感

「M-3」に関しては、導入前の放送機器の保守点検は、年4 回のオンサイト保守点検のみであり、能動的な機器監視は行なっていなかった。そのため、点検は実施していたものの、「実際の対応は事故発生後となる受動的な運用となっており、不安を感じていました。また、特に夜間帯における障害発生時の担当者へのエスカレーションや障害の切り分け、技術的サポートについて、課題がありました。そうした中で、『M-3』の導入がこれらの問題の解決につながるのではないかと考え、ミハル通信に相談しました」(花田部長)。
ミハル通信は仙台CATV の意向をくみ取り、要望に応じたサービス内容へと「M-3」のカスタマイズも行なった。その効果もあり、仙台CATV は現在、安心して設備を運用することができるようになった。「『M-3』は固定的なサービスではなく、保守・監視サービスの内容を状況に応じてブラッシュアップできる点に、大きな魅力を感じています。今後も状況の変化に対応していただきたいと期待しています」(梶本社長)。仙台CATV が「M-3」のカスタマイズの要望で特に重視していたのは保守の体制面で、NOC(Network OperationsCenter)のようなリモート保守体制を構築することを希望し、ミハル通信はその期待に沿うべく体制を整えている。特に小規模なケーブルテレビ事業者はこのような保守体制を求めている事業者が多いだろう。
仙台CATV では「M-3」の保守サービスの一環としてミハル通信から毎月提供される点検レポートも活用している。レポートの内容の一つに、放送設備のログ解析がある。気象状況などが原因で予備系に切り替わった機器を本系に戻す作業に、ログが役立っている。予備系のままにしておくと障害発生時に切り替えができなくなるため戻しておく必要があるが、予備系のままになっている場合はレポートのログによってその状態に気づくことができる。
レポートは設定の見直しにも活用している。「最近ではBS 放送の再編により、使用しているトランスポンダの移動などの変更がありました。それに対して、レポートでは『この設定を直した方がよい』といった指摘、提案が行われます。これに基づき、担当者が設定変更を実施しました。場合によっては、ミハル通信がリモートで設定変更などの対応をしてくれることもあります」(花田部長)。仙台CATV では毎月、レポート内容を担当者が確認し、必要な作業を行なっている。
ケーブルテレビ事業者の放送設備の障害は、それほど頻繁に起きるものではない。「ミハル通信の製品は安定しており、運用に問題はありません。しかし、一度事故が発生すればその影響は非常に大きくなるため、『CATV 監視装置』や『M-3』の導入が重要だと考えています」(花田部長)。実際に昨年、コミュニティチャンネルでブロックノイズが発生
したケースがあった。その際には「CATV 監視装置」からアラートメールが発報され、仙台CATV の担当者はすぐに「M-3」の保守受付窓口に連絡し、障害の原因切り分けを依頼した。「『M-3』の窓口にはミハル通信の技術者が常駐しています。他社の保守窓口では、当日は受付だけして『詳細は翌営業日に回答させていただきます』といった対応をして
いるところもありますが、『M-3』は即座に技術的な見解を示していただきました」(花田部長)。
この事例では、障害の原因はミハル通信の装置ではなく、EPG の設定に問題があったのだが、この原因切り分けの回答を短時間で得られた。 「『M-3』の窓口に連絡したのは夜の22 時頃でしたが、電話してから30 分程度で迅速に見解を受け取ることができました。その後、仙台CATV 社内で担当部署へのエスカレーションを行い、関係ベンダーに調査を要請した結果、受付担当者の指摘通りの原因であることが確認されました。『M-3』を導入していてよかったと思いました」(花田部長)。現在「M-3」の保守サポートを担当しているスタッフは、ミハル通信でもともと技術開発部署に所属し、ソフトウェアなどの開発や検証に携わっていた経験を持っており、その専門性がサポートに活かされている。仙台CATV の梶本社長も「このような原因切り分けではスピード感が重要であり、次の行動にすぐ移れるかどうかで当社の対応の質が大きく変わります。すぐに対応できる『M-3』の担当技術者は優秀です。『M-3』を選んでよかった」と評価する。
ケーブルテレビ事業者の経験の浅い従業員が問い合わせた場合でも、『M-3』の専門的な技術者が対応するのは「非常に助かります。ケーブルテレビ事業者の保守管理としても、担当従業員に対し的確な指示が出しやすくなります」(花田部長)。


対象機器の多さは「非常に魅力的」 「M-3」のAI 新機能にも期待
「M-3」がサポートする対象の機器は、当初はデジタルヘッドエンドからスタートしたが、現在はHFC の送受信設備などにも拡大している。ミハル通信はネットワーク監視機能を実装した製品を増やしており、「M-3」のサポートの対象となっている機器が増えている。仙台CATV は現在、FTTH の拡大を推進している。FTTH の放送系設備も「M-3」のネットワーク監視、リモート保守が可能になる見通しで、仙台CATV の期待は大きい。「今後サポート対象機器が広がっていく見通しも、当社が『M-3』を採用した決め手の一つ です」(花田部長)。現在、各ベンダーの放送機器の多くがネットワーク監視に対応しつつあるが、「ベンダーによっては、ネットワーク監視機能はあってもリモート保守などのサービスメニューがない場合も多いですが、ミハル通信の機器の多くは『M-3』のリモート保守を利用できます。このことは、ケーブルテレビ事業者の設備運用者にとって非常に魅力的です」(花田部長)。今後も「M-3」のリモート保守の対象となるミハル通信製品が増えることに仙台CATV は期待している。

「M-3」には新サービスも追加され、利便性がさらに向上している。「CATV 監視装置」など監視装置は機能が優れている分、障害時に発報されるアラートメールの件数が多くなる。その中には対応が必要な障害だけでなく、例えば静止したような映像が多い囲碁・将棋などの番組を「CATV 監視装置」が障害と誤認し、実際には問題がないにもかかわらずアラートメールが送られてしまうケースも多い。従来の仕組みではこうした誤検知を完全には防げず、仙台CATV の場合はアラートメールの約9 割が実際には障害ではないケースで、アラートメール受信後の対応の判断は担当者に委ねられているのが現状だ。
この課題に対して、現在仙台CATV では「M-3」の新サービスとしてミハル通信が開発した「コンテンツ判定AI」を実験的に導入している。このサービスは、正常だが動きのない映像が障害と誤認されることを防ぎ、不要なアラートメール発報を抑制するもの。「ケーブルテレビ事業者の負担軽減を実現する新サービスと期待しています」(花田部長)。不要なアラートメールが多いという課題は、ネットワーク監視機能を持つ機器を使用している他のケーブルテレビ事業者でも共通しており、ミハル通信は障害と誤検知された映像データを仙台CATV はじめ各事業者から提供してもらい、AI の学習に活用し機能向上を進めている。「日本全国のケーブルテレビ事業者のデータを活用した、より信頼性の高いサービスの開発をぜひお願いしたいですね」(梶本社長)。
仙台CATV は自社だけでなく、業界の中小規模のケーブルテレビ事業者が抱える機器の監視・保守に関する共通の課題を解決するため、「M-3」の新サービスの実験的導入を通してミハル通信にフィードバックを行い、カスタマイズやサービスの改善に協力している。「その結果、『M-3』が他の事業者にとってもさらに優れたサービスとなることを目指しています。ケーブルテレビ事業者各社のエンジニアを助けるサービスとして、さらに有用になることを期待しています」(花田部長)
AIリモート保守サービス「M-3」について
M-3(エム・トリプル)は、リモート接続されたミハル通信機器の情報とステータスを管理し、障害通知・予測、運用、復旧支援を行うAIリモート保守サービスです。
監視、管理、保守の三つの主要機能に加え、リモートでの障害対応も提供し、放送運用の信頼性を向上させます。
さらに、オプションのメールフィルタリングサービスを通じて、降雨減衰予測、コンテンツ判定AIにより必要な情報のみを特定の受信者に向けてメール配信することが可能です。
